面接官が本当に見ているもの

面接官が本当に見ているもの

前回の記事では、「自分の経験を掘り起こすこと」について書きました。

今回は、その次のステップです。

整理した経験を、どのように相手へ伝えるかについてお話ししたいと思います。

約2年前、私はある営業マネージャーの方をクライアント企業へご紹介しました。

いつものように面接対策を行い、想定される質問や、それぞれの質問にどう答えるかを一緒に確認していきました。

練習を進める中で、すぐに気づいたことがありました。

彼は、自分の経験を非常に分かりやすく、論理的に説明する力を持っていたのです。

質問の意図が少し曖昧だと感じたときには、「〇〇という意味でしょうか」と確認してから答えることもありました。

回答は簡潔でありながら、急いでいるような印象はありませんでした。必要な情報はしっかり含まれていましたが、話が長くなりすぎることもありません。構成も分かりやすく、何かを暗記して話しているような不自然さもありませんでした。

そのため、私からお伝えするアドバイスはほとんどありませんでした。

改善点がほとんど見つからなかったのです。

面接後、クライアントからフィードバックをいただきました。

まず、「経験はポジションに非常によく合っている」という評価がありました。

しかし、それ以上に印象的だったのは、彼の伝え方についてのコメントでした。

「説明がとても分かりやすかった」

「質問の意図を確認してから回答する姿勢が良かった」

こうした点が何度も評価されていました。

最終的に企業は彼へオファーを出しました。

他社の選考も進んでいることを理解したうえで、何度も話し合いを重ね、ぜひ入社してほしいと強く働きかけた結果、彼はその会社への入社を決めました。

この出来事は、私が長年の仕事の中で感じてきたことを改めて実感させてくれました。

コミュニケーションも評価の一部

多くの方は、面接では「何を話したか」が評価されていると思っています。

もちろん、それも大切です。

しかし、実際にはそれだけではありません。

例えばシステムエンジニアが技術的な課題について説明しているとき、面接官は単に過去のプロジェクトについて聞いているわけではありません。

「この人は、難しい技術的な判断やその背景を、お客様に分かりやすく説明できるだろうか」

そんな場面を想像しています。

プロジェクトマネージャーであれば、情報をどのように整理するか、プレッシャーのある状況でも落ち着いて説明できるか、さまざまな関係者との議論をどのようにリードするか。

そうした点も見られています。

営業職であれば、顧客との信頼関係をどのように築くか、考えをどう伝えるか、難しい状況でも落ち着いて対応できるか。

こうしたことが、回答を通して自然と伝わります。

つまり、面接とは単に経験を説明する場ではありません。

入社後、どのようにコミュニケーションを取る人なのかを示す場でもあるのです。

経験を会話に変える

多くの候補者は、話すべき経験をすでに持っています。

難しいのは、その経験を整理し、相手に伝わる形で説明することです。

経験を掘り起こしたら、次はそれを相手に伝わる形で説明することが重要になります。

ただ経験そのものを伝えるだけではありません。お客様や同僚、社内外の関係者とどのように関わり、仕事を進めていく人なのかまで、面接官がイメージできるように伝える必要があります。

面接で苦戦する方の多くは、経験不足だからではありません。

一つの質問に対して、あらゆる追加質問まで先回りして答えようとしてしまうのです。

複数のプロジェクトの話が混ざってしまったり、必要以上に細かな説明を加えてしまったり、聞かれていないことまで話してしまうことも少なくありません。

一方で、面接がうまくいく方は、その逆です。

まず、聞かれた質問にきちんと答えます。

自分の役割を明確に説明します。

面接官が自分の責任範囲や貢献を理解するために必要な情報を伝えたら、そこで一度話を終えます。

もし面接官がさらに詳しく知りたければ、次の質問をしてくれます。

そのほうが、最初からあらゆる質問を想定してすべてを話そうとするよりも、結果として自然で深い会話になることが多いのです。

約20年間、人材紹介の仕事を続ける中で感じることがあります。

良い面接は、面接らしくありません。

自然な会話のように進んでいきます。

それは質問が簡単だからではありません。

候補者自身が、自分の経験をしっかり理解し、無理なく言葉にできているからです。

面接官は、これまで何をしてきたかだけを評価しているわけではありません。

もっと大きな視点で考えています。

「この人は、面接でこのように分かりやすく話している。では、お客様や社内のメンバーとも、同じようにコミュニケーションを取ってくれるだろうか」

一つひとつの回答は、単なる答えではありません。

あなたが実際にどのように仕事をするのかを示すものでもあるのです