経験は足りないのではない。埋もれているだけだ。

経験は足りないのではない。埋もれているだけだ。

経験は足りないのではない。埋もれているだけだ。

私の仕事の中で最もやりがいを感じることの一つが、候補者の面接対策をサポートすることです。

「面接対策」と聞くと、多くの方は定番の質問に対する回答を練習したり、印象を良くするためのテクニックを学んだりすることを思い浮かべるかもしれません。もちろんそれらにも価値はありますが、私の面接対策ではそこに重点を置いていません。

私の役割は、候補者の答えを作ることではありません。すでにお持ちの経験を引き出し、それを分かりやすく簡潔な形に整えるお手伝いをすることです。

以前、システムエンジニア職の面接を控えた候補者の対策を担当したことがありました。いつもの面接対策と同じように、最も定番の質問から始めました。

「これまでのご経験について教えてください。」

彼は、日本のチーム、ドイツのソフトウェア開発チーム、そして顧客の間の橋渡しをしながら、ADAS開発を支援してきたと説明してくれました。

悪い回答ではありませんでした。

ですが、その説明だけなら何百人ものエンジニアにも当てはまります。

というのも、私は彼の経歴をすでに知っていたのです。彼はシステムエンジニアとして10年近いキャリアを持ち、ソフトウェア開発のバックグラウンドがしっかりしており、日本を代表する自動車メーカーと直接やり取りをして、チームの中核メンバーとして活躍していました。

今の説明だけで伝えきれるはずがない。もっと多くのことをやっているはずだ、と感じました。

そこで、もう一つ質問をしました。

「実際には、どんなことをされているんですか?」

彼は少し考えてから、こう答えました。

顧客の要件を集め、顧客が本当に達成したいことを理解し、ドイツの開発チームと定例会議や日々のやり取りを通じてその要件を共有し、両者の間で技術的な実現可能性を交渉し、問題が発生した際にはソフトウェアデバッグをサポートし、開発全体を通じて技術面の主担当として動いている、と。

その瞬間、彼の経験に対する私の理解はまったく別のものになりました。

彼のキャリアそのものは何も変わっていません。

変わったのは、それをどう説明したかだけでした。

この会話は、私が何度も目にしてきたことを象徴しています。

多くの候補者は、経験が足りないのではありません。

自分の経験のどの部分に語る価値があるのかに気づけていないのです。

経験が「当たり前」になるとき

同じ役割で働く期間が長くなるほど、日々の業務は自分にとって当たり前のものになっていきます。

顧客との会議をリードすること、技術要件を交渉すること、グローバル開発チームを調整すること、量産時のトラブル対応をすること。

何年も続けていると、こうしたことは「実績」ではなく「日常業務」に見えてくるのです。

しかし皮肉なことに、そうした「日常業務」こそが、採用マネージャーが最も聞きたい内容だったりします。

彼らは、あなたが今の役割の基本業務をこなせるかどうかを判断しようとしているのではありません。

あなたがどう考え、どう問題を解決し、どうコミュニケーションを取り、どれほどの責任を実際に担ってきたのかを理解しようとしているのです。

多くの候補者は、そうした何年もの経験を、いくつかの一般的な言葉に押し込めてしまいます。

「開発を支援しています。」

「お客様とやり取りしています。」

「プロジェクトを管理しています。」

間違ってはいません。

ですが、それだけでは不十分です。

「業務内容」と「経験」の違い

業務内容は、あなたの仕事を説明するものです。

経験は、その仕事をどのように遂行しているかを説明するものです。

「顧客との会議をサポートしています。」

これは業務内容です。

しかし、少し掘り下げていくと、実際には日本を代表する自動車メーカーの一社と技術的な週次ディスカッションをリードし、顧客の要件を技術仕様に落とし込み、海外チームと開発の優先度を交渉し、複数のステークホルダー間の技術的な意見の相違を解決している、といったことが見えてくるかもしれません。

同じ業務内容。

まったく違う会話です。

だからこそ、私は候補者に「こう答えなさい」と伝えることはほとんどありません。

代わりに質問をします。

  • 「サポート」というのは具体的に何を指していますか?

  • 誰と一緒に仕事をしていますか?

  • 意思決定は誰がしていますか?

  • 要件が変わったとき、どうしていますか?

  • あなたが解決を担っている問題は何ですか?

  • 顧客と開発チームの意見が食い違ったとき、どうしていますか?

  • あなた自身の責任はどこにありますか?

そして、ほぼ必ず候補者はある地点にたどり着きます。

「あ、実は…」

たいてい、そこから本当に興味深い話が始まります。

第二の作業 ― 何を削るかを決める

経験を引き出すのは、仕事の前半でしかありません。

実際にやっていることをすべて話してもらった後、その回答はたいてい長すぎます。

先ほどのシステムエンジニアの二つ目の説明(要件の収集、ドイツとの交渉、デバッグ、技術面の主担当)は、彼の役割をずっと正確に映し出したものでした。

ただ、それは六つの要素の列挙でもありました。

面接の場では、その六つすべてを並べたいわけではありません。

そのポジションにとって最も重要な二つか三つを選び、そこから話し始めたいはずです。

だから「あ、実は…」の後に、私はよくこう聞きます。

「今話してくれたことの中で、採用担当者に一番伝えるべきことを二つか三つ選ぶとしたら、何ですか?」

ここで問われるのが判断力です。

テクニカルリード職に応募している候補者なら、ドイツとの交渉や技術面の主担当としての仕事を強調するかもしれません。

プロジェクトマネジメント職なら、調整業務やステークホルダーマネジメントを前面に出すかもしれません。

同じ経験でも、フレーミングが変わるのです。

面接官は、業務のリストを集めたいわけではありません。

あなたがもたらす価値を理解しようとしているのです。

そして、焦点を絞った回答は、網羅的な回答よりもずっと早くその価値を伝えてくれます。

候補者は「聞こえた質問」に答えがち

もう一つ、よく見られるパターンがあります。

候補者は面接官が文字通り発した質問に答えている一方で、面接官はもっと大きな質問をしていることが多いのです。

「これまでのご経験について教えてください。」

候補者には、

「業務内容を列挙してください。」

と聞こえるかもしれません。

しかし面接官が本当に聞きたいのは、

「なぜあなたにこのポジションを任せてよいのか、私に理解させてほしい。」

ということです。

これはまったく別の質問です。

他の質問でも同じことが起きます。

「なぜマネージャーになりたいのですか?」

という質問に対して、

「キャリアを発展させたいからです。」

と答える。

悪くはありません。

ですが面接官が知りたいのは、あなたを実際に動かしているものは何か、ということです。

若手エンジニアを指導した経験はあるか。

人を育てることに喜びを感じるか。

リーダーシップを示すために既にどんなことをしてきたか。

「これまでの成果について教えてください。」

という質問に対して、

「うちのチームがホンダの問題を解決しました。」

と答える。

話の出発点としては悪くありません。

ですが、その中であなた自身の役割は何だったのか。

あなたが下した判断は何か。

あなたが乗り越えた障害は何か。

あなたの貢献が結果にどう影響したのか。

そういう詳細こそが、面接官があなたの経験を理解するために必要なものです。

振り返り、そして編集

自分の経験を説明することは、単なるコミュニケーションの練習ではありません。

振り返りの作業であり、その後に続く編集の作業でもあります。

経験は長い年月をかけて積み重なっていくものです。

自分の経験を理解するには振り返りが必要です。

分かりやすく説明するには練習が必要です。

そして簡潔に説明するには規律が必要です。

何を残すかを決めることよりも、何を削るかを決めることの方が、たいてい難しいのです。

多くの人は、自分がやってきたことの全体像を立ち止まって考える機会がないままきています。

目の前の仕事に追われてきたからです。

時には、誰かが正しい質問を投げかけるだけで経験が浮かび上がり、さらにいくつかの質問を通じて、本当に大切なものを見極めることができます。

これまで何百人もの候補者の面接対策をサポートしてきて、私が気づいたことがあります。

最も大きなブレークスルーは、候補者に「より良い答え」を提供することからはめったに生まれないのです。

それは、十分な数の質問を投げかけることで、候補者が自分自身のキャリアを違う目で見始める瞬間に生まれます。

経験は、ずっとそこにありました。

ただ、掘り起こされる必要があっただけです。

そして掘り起こされた後は、他者にその価値を理解してもらえる形で、一つのストーリーとして組み立てる必要があります。

だからこそ私は、面接対策を「候補者に何を言うべきかを教えるもの」だとは考えていません。

私はそれを、「候補者自身が積み重ねてきた経験の価値に気づくお手伝いをするもの」だと考えています。