準備が、チャンスを広げる

準備が、チャンスを広げる

長年リクルーターとして仕事をしてきて、強く感じることがあります。

それは、本来であれば十分にチャンスがあったはずの候補者が、面接に進む前の段階でその機会を逃してしまうケースが少なくないということです。

能力が足りなかったからではありません。

転職する気持ちがなかったからでもありません。

誰かが意図的に遅らせたわけでもありません。

多くの場合、その理由は、とてもシンプルです。

タイミングです。

約20年この仕事を続ける中で実感しているのは、採用は私たちの日常生活とは違うスピードで進んでいくということです。

仕事が落ち着くのを待ってくれるわけでもなく、予定が空くまで採用活動が止まるわけでもありません。

チャンスは、こちらの都合に合わせてやって来るとは限らないのです。

よくある採用の流れ

例えば、月曜日に新しい求人を担当したとします。

翌日には、自分のネットワークの中から「この方ならぜひご紹介したい」と思える方へ連絡を始めます。

すぐに返信をくださる方もいれば、数日後に返信をいただくこともあります。

日程を調整してお話しし、会社やポジションについてご説明します。

その後、求人票などの詳細をご確認いただき、改めてお話しすると、

「興味があります。」

そう言っていただけることも少なくありません。

ここまでは順調です。

次にお願いするのは、履歴書や職務経歴書のご提出です。

「週末に更新して送ります。」

ごく自然な流れです。

ところが、その週末までに仕事が忙しくなったり、急な出張が入ったり、お子さんの学校行事やご家族との予定が入ったりすることがあります。

気が付けば週末は終わり、書類が届くのは翌週。

ここまでで、約2週間半。

そして実は、これでもかなり順調なケースです。

誰が悪いわけでもありません。

リクルートメントの外側にも、仕事や家庭、それぞれの生活があります。

現実には、それぞれが日々の中で精一杯動いているだけなのです。

採用は待ってくれない

その間も、採用活動は止まりません。

他の候補者は面接を受けています。

採用担当者は応募書類を確認しています。

面接日程は少しずつ埋まっていきます。

時には、最初の面接で非常に高い評価を受け、そのまま最終面接へ進む候補者もいます。

私はこれまで何度も、企業からこんな言葉を聞いてきました。

「今回は十分な候補者が集まりました。」

「これ以上、新しい応募者を見る予定はありません。」

「すでに最終選考まで進んでいる方がいます。」

企業が冷たいわけではありません。

採用を急いでいるだけでもありません。

必要な人材が見つかれば、採用を進める。

それが企業として自然な判断だからです。

プロジェクトは進みます。

事業も動き続けます。

採用も、その流れの中で進んでいきます。

優秀な候補者でも、選考に進めないことがある

候補者の立場では、なかなか見えないことがあります。

優秀な方であっても、競争に加わる前に話が終わってしまうことがある、ということです。

企業は、その時点で選考に参加している候補者の中から判断をしています。

企業は「一番早い人」を採用しているわけではありません。

その時点で評価できる候補者の中から、最も適した人を採用しているのです。

たとえ非常に優秀な候補者であっても、3週間後に選考へ加わる頃には、採用のドアがすでに閉まり始めていることもあります。

準備が差を生む

一方で、私が比較的スムーズにご紹介できるケースには、ある共通点があります。

それは、以前にも一度お話ししたことがある候補者の方です。

数か月前に別のポジションをご紹介し、その時に職務経歴書を更新していただいていることもあります。

これまでのご経験や、今後どんなキャリアを考えているのかも、すでに共有できています。

そんな中で、新しいポジションをご紹介すると、会話はとてもシンプルです。

「田中さん、以前お話しした案件と似ていますが、今回はさらにご経験を活かせそうなポジションがあります。」

「いいですね。書類を送ってください。」

そのやり取りだけで、数日後には応募まで進むこともあります。

もちろん、急いでいるわけではありません。

準備ができているからです。

準備ができているだけで、数日で動き出せることも珍しくありません。

私たちにできること

もちろん、すべてを思いどおりに進めることはできません。

仕事が忙しい時期もあります。

家庭を優先したい時もあります。

予定どおりにいかないこともあるでしょう。

それが普通です。

だからこそ、普段から少しだけ準備をしておくことが大切だと思います。

職務経歴書を定期的に見直しておく。

担当したプロジェクトや成果を、その都度メモしておく。

業界の知り合いとは、転職を考えていない時でも緩やかにつながっておく。

そして、

「もし良い話があったら、自分は何を重視するだろう。」

そんなことを時々考えてみるだけでも十分です。

転職活動を始める必要はありません。

実際、私がお話しする方の多くは、今の会社で充実した毎日を送っています。

転職を前提に準備する必要もありません。

大切なのは、選択肢を持てる状態にしておくことです。

最後に

私はこれまで、「転職は急いで決めるものではない」と考えてきました。

時間をかけて情報を集め、自分自身の将来を考え、ご家族とも相談した上で判断する。

それが理想だと思っています。

一方で、採用の現場では、すべてがそのペースで進むわけではありません。

チャンスには、必ず期限があります。

開かれた扉も、いつかは閉まります。

準備をしているからといって、必ず転職が成功するわけではありません。

しかし、少なくともチャンスを検討する機会は得られます。

そして時には、その違いが、

「求人を知るだけ」で終わるのか。

それとも、実際に挑戦する機会を得られるのか。

その分かれ道になることもあるのです。